2020年度 ゼミ募集要項

國學院大學経済学部「演習II」の募集要項です。公式の文書は字数制限があったので、若干追記しています(追記部分をイタリックにしています)。

(1) テーマ

3年次:企業の調査方法と分析手法の習得

4年次:ビジネス・エコシステムの理解とオウンド・メディア作成実践

(2) キーワード

3年次:経営戦略論 イノベーション論 企業調査法 企業分析 業界分析 因果関係 研究方法

4年次:GAFA プラットフォーム・ビジネス 広報 PR Webマーケティング コンテンツ・マーケティング ブランディング 作文 編集 メディア

(3) ゼミの進め方(合宿など正課授業以外を含む)

演習II(3年生・通年)

前期の15回は、イタリアンチェーンのサイゼリヤをとりあげ、マーケティング分析や財務諸表分析、他企業との戦略比較等を行います。単一事業で、みなさんにとって身近な企業を対象とすることで、まずは企業情報の収集と分析の練習を行います。情報整理の一環として、創業者の正垣泰彦会長が書かれた『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』を読むところからはじめ、財務情報や雑誌記事の収集へと進めていきます。

後期では、序盤の5回は学術研究者の書いた本を読み、そこで想定されている因果関係を正確に読み解く練習をします。本年度は筒井淳也(2015)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』中公新書を丁寧に読みます。

3年生の終盤残り10回は、再度企業分析・業界分析を行います。TSUTAYAや蔦屋書店などを経営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を分析対象として、特に共通ポイント市場(Tポイント、dポイント、楽天ポイントなど)の分析を行う予定です。CCCは多角化企業であり、業態転換中でもあるので、分析はやや難しめです。分析内容の進展次第では、3年生の春休みにも分析や執筆を続けてもらう可能性があります(スプセではなく正課授業外の作業になります)。

演習IIサマセ

この学年のみ2年後期のゼミを行っていないので,その分の学習を補うためにサマーセミナーを予定しています。サマーセミナーでは2冊の本を数日かけて輪読します。清水洋(2019)『野生化するイノベーション』新潮選書久米郁男(2013)『原因を推論する』有斐閣,の2冊です。前者はこの領域の第一人者が昨年出版されたイノベーション領域の必読書です。久米(2013)は政治学の本ですが,調査や研究を進める上での基礎をコンパクトにまとめた良書です。

演習III(4年生・通年)

4年次はビジネス・エコシステムについての輪読とオウンド・メディア作成の実習を行います。

ビジネス・エコシステムとは,多数の企業が参画して,お互いに利益になる共生関係を築いている状態のことをいいます。例えば,AmazonのウェブサイトではAmazonだけでなくいろいろな業者が自分たちの商品(古本など)を販売しています。古本業者は自分の品物を売らせてもらう代わりにAmazonに一定の手数料を納めます。新品だけでなく古本も集まることで,Amazonの品揃えはますます良くなり,多くの消費者を集めることができます。あるいは,皆さんが日頃見ているYoutubeでは多数のユーチューバーが動画をアップロードし,動画の冒頭や途中には様々な広告主が広告をだしています。広告収入はYoutubeの収入となるだけでなく,ユーチューバーにも分配されます。

このように,現代のビジネスでは,GoogleやAmazonといった巨大企業の提供する「プラットフォーム」に多数の企業や個人が参画し,お互いの利益になる共生関係を形成しています。このような企業間関係のことをビジネス・エコシステムと呼びます。4年ゼミでは,このビジネス・エコシステムやプラットフォーム経済について,本の輪読と実習を通じて深く学んでいきます。

Googleを中心とするビジネス・エコシステムの仕組みを学ぶために,輪読の他に、実際にインターネットに文章をアップロードして,ウェブサイトを作成し、アクセス解析を行います(最近のビジネス用語では,オウンド・メディアやコンテンツ・マーケティングとよばれる内容になります)。

Googleの検索システムで上位にヒットするようなウェブサイトを作成するにはどうすればいいか,実践を通じて勉強していきます。サイトの内容としては「ゼミで学んだことをわかりやすくまとめて紹介する」「高校生や大学生の役に立つ内容を掲載する」とだけ決めていますが,それ以外のことはゼミ生の話し合いで決めていきます。この実習を通じて,ビジネス・エコシステムで生き抜く難しさを実感すると共に,作文の技法を学び,文章の書き方の上達を目指します。僕の前任校のゼミ生たちが書いた学生ブログも確認できますので、参考にしてください。

従って,4年次のゼミは「経営戦略」と「広報・PR」の両方にまたがった内容であり,2種類の学生をターゲットとしているといえるでしょう。ひとつのターゲットは,GAFAと呼ばれるような巨大IT企業の仕組みや戦略について勉強したいという学生です。もうひとつのターゲットは,広報やWebマーケティング,メディアなどの職種・職業に関心がある学生です。

(4) 演習Ⅳ以外で論文などを課す場合の詳細(枚数や時期など)

演習II(3年生)の前期期末に4000字以上のレポート、後期期末に4000字以上のレポートを書いてもらう予定です。本ゼミでは4年次のいわゆる卒業論文は書きません。ただし,3年次も4年次も輪読のレジュメや、レポート作成、ウェブサイト執筆など、絶えず何かしらの文章を日常的に書いたり直したりすることになるので,文章を書くのが嫌いな人には向いていないと思います。

(5) 先輩たちの主な就職先と傾向

初の募集になりますので,先輩はいません。将来の後輩達に先輩面できるチャンスです。

(6) 教員について(自己紹介等)

1984年兵庫県神戸市生まれ。2007年一橋大学商学部卒業,2013年一橋大学大学院博士後期課程修了,博士(商学)。一橋大学イノベーション研究センター特任助手,東北学院大学経営学部准教授を経て,2020年度より現職。その他の詳細は自己紹介のページを参照してください。

本学における主な担当科目は「経営組織」ですが,ゼミの内容は組織論と関係ないことが多くなると思います。ただし,ゼミ生の関心に応じて戦略論・組織論・イノベーション論あたりのトピックには対応可能です。

(7) その他

  • ゼミ生には,本や各種情報をよく読み,文章をよく書くことが求められます。戦略や広報というと華やかな印象があるかもしれませんが,基本的には地道な改善作業の積み重ねです。
  • 合宿等は予定していません。懇親会も、教員からの提案は年1,2回程度の予定です。
  • 本ゼミは毎学年違う内容を実施し、学年を越えた交流は少なめの予定です。
  • 選考基準としては成績と提出書類を重視し、面接は確認程度の予定です。がんばって書類でアピールしてください。
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