研究関心

問題意識

イノベーションは,社会的に新規性が高い現象です。そのため,登場した当初はそのイノベーションの法的位置づけが未確定であったり,あるいは既存の法律と整合的でないという問題が生じることがあります。イノベーションの推進者(企業家・アントレプルナー)は,当然その新事業に社会的価値があると信じて推進するのですが,社会からは反対や懸念の声が上がることもあります。企業家が新事業の社会的・法的正当性を獲得すべく働きかけをする際に生じる諸問題や戦略戦術を私は検討しています。
例えば,パーソナルモビリティの合法化の事例として,広く普及した電動アシスト自転車と,未だ普及できていないセグウェイを比較してみましょう。電動アシスト自転車は1990年代にヤマハ発動機が開発した,人力をモーターで補助することにより推進力を得る乗り物です。この電動アシスト自転車を,オートバイの範疇の一製品ではなく,免許やヘルメットが不要な自転車の1カテゴリとして認めさせるべく,ヤマハ発動機は警察庁と運輸省(現:国土交通省)に働きかけることで,このような製品カテゴリが実現しました。2018年現在,国内で製造される自転車の8割以上が電動アシスト自転車となっています 。
他方で,セグウェイ社の開発したセグウェイは2001年12月に公表された電動立ち乗り型の二輪車です。日本の道路交通法上は公道を走ることができず,利用は私有地内に限られています。現状の道路交通法では自動二輪車はブレーキを備えている必要がありますが,セグウェイにブレーキを搭載しようとすると転倒してしまうため,セグウェイの仕組み自体を変更するか,道路交通法の改正が必要な状況となっています。
このように,優れた製品開発が行われても,その普及に際しては法律がハードルとなることがあり,法改正のための説得戦略を検討する必要があります。このような活動は,ロビイングやパブリック・アフェアーズ,アドボカシーと呼ばれています。経営学では一般的な市場戦略と対比させて「非市場戦略」(non market strategy)や制度戦略と呼ぶこともあります。私は,これまでに起きた法解釈の変更事例を調査研究し,日本をイノベーティブな製品やサービスを受け入れやすい社会にするために必要な諸条件について研究しています。

一般の方向け資料

①2016年11月24日東北学院大学経営学部「おもてなしの経営学」第8回

授業で,自身の研究テーマに近い内容をお話ししました。
また,同内容は『東北学院大学経営学論集』第8号にも掲載されています。

②2013年度 西武文理大学イノベーション・プロセス論 第15回「制度要因への対応」

15 制度の変革とイノベーション
こちらも授業用に作成した資料のため,一部文言を省略している部分があります。

 

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