経営入門 文献案内

今期は授業は動画に回して、教室授業ではひたすら余談を積み重ねる予定なので、話題用に文献メモ。
随時更新予定

概説書

最近出版された物から。若手を含む複数名が共著でかいたもの。共著で書くことのメリットは、それぞれが専門に近いことを書く、複数名でチェックしながら書くといった点にある。

具滋承編(2022)『経営学の入門』法律文化社
中川功一・佐々木将人・服部泰宏(2021)『考える経営学』有斐閣ストゥディア、有斐閣。
初学者はこのあたりの章をバラバラと読んで、どういう話が経営学にはあるのか、自分の関心の持てそうなところはどこなのかを探索するところから始めればよいように思う。

タイプの違う入門書として、大家が1人で経営学の全体を体系的に書いたというタイプの入門書も最近複数出版されている。
武石彰(2021)『経営学入門』 岩波書店。
青島矢一著・榊原清則監修(2022) 『経営学入門 (はじめての経営学)』東洋経済新報社

これらの特徴は経営学という広い領域をどのように区分整理すると全体像が見やすいかという点にある。武石(2021)は「価値の創造」「人々の協働」「資本の活用」「社会への責任」という4つに分類をしている。青島(2022)は「顧客価値の創造」「生産性の向上」「経済価値の配分」に「価値の測定」を加えた4要素を提示している。このあたりの分類枠組みの妥当性を考えるあたりに研究者としては仕事があるのだが、本当の初学者にその作業が必要かどうかは僕にはわからない。ただ、最初はわからなくとも、学問に興味を持ち始めてから振り返ってもう一度読み、なるほどそういう整理だったのかということを納得するプロセスはありうる(僕の頃は伊丹敬之・加護野忠男(2003;2022)『ゼミナール経営学入門』日経BPがそういう位置づけだったように思う。これも本当に最初に読むべき本かどうかは若干疑問が残る。)。

コーポレート・ガバナンスとCSR

大別して①マネジメント(戦略や組織の話)の拡張としてガバナンスを考えるか、②ファイナンス・応用経済学寄りのもの(エージェンシー問題、出資者の監視のメカニズム)、③法制度やガバナンス・コードへどう対応していくかというルール寄りのもの(ガバナンス・コード対応は実務上の作業がいろいろあるのだろう、本が多い)、④組織事故や買収防衛など特定のトピックを取り上げたもの、⑤企業の社会的責任(CSR)や経営倫理に関するもの(ガバナンスとは別の領域とする場合も多い)がある。
①や⑤は結構研究を進めるのが難しく、②や③が大勢を占めるようになってきている。それぞれ別の研究者がやっているので、一冊の教科書にするのが難しいところがある。
バランスのとれたものとして

吉村典久・田中一弘・伊藤博之・稲葉祐之(2017)『企業統治【ベーシック+】』中央経済社 が良さそう(ファイナンスの観点はやや弱い)。
加護野忠男・砂川伸幸・吉村典久(2010)『コーポレート・ガバナンスの経営学』有斐閣 も複数人の著者で分担執筆しているタイプの教科書で、砂川先生がファイナンスの人。
風間信隆編(2019)『よくわかるコーポレート・ガバナンス』ミネルヴァ書房、はファイナンスの観点だけでなく、ガバナンスの国際比較に関する記述が特徴的。

①、②は研究書に近いものを読むとまた違う印象があるだろう。概説書とは登場する概念や変数が違う印象を受ける。
宮島英昭編(2008)『企業統治分析のフロンティア (早稲田大学21世紀COE叢書―企業社会の変容と法創造)』日本評論社。(絶版のようだ。院生時代に読んで勉強になった)
三隅隆司・茶野努・安田行宏編著(2020)『日本企業のコーポレート・ガバナンス』中央経済社。(ファイナンス、応用経済学系)
③はアップデートが激しそう(僕も追い切れていない)なのでなるべく新しいものにあたってほしい。
松田千恵子(2021)『サステナブル経営とコーポレートガバナンスの進化』日経BP。
宍戸善一 (2020)『ベーシック会社法入門<第8版> (日経文庫) 』日経BP。

⑤CSR領域は企業経営の拡張として企業の社会性について考える人達と、倫理学のバックグラウンドから、経営現象や労働現象を応用事例として考える(企業倫理や経営倫理と呼ぶことの方が多い)でだいぶ雰囲気が違う。概説書というよりは読み物として、薄くておもしろかったものを2冊。

鈴木良隆編(2014)『ソーシャル・エンタープライズ論』有斐閣。
倫理学周りはあまり詳しくないので正しく本を評価できているわけではないのだが、
梅津光弘(2002)『ビジネスの倫理学』丸善出版。(同シリーズで田中朋弘(2002)『職業の倫理学』丸善出版もある)。
あたり。

マーケティング

概説書

久保田進彦・澁谷覚・須永努(2013) 『はじめてのマーケティング(有斐閣ストゥディア)』 有斐閣。
池尾恭一・青木幸弘・南知恵子(2010) 『マーケティング(New Liberal Arts Selection)』有斐閣。

フィリップ・コトラー, ケビン・レーン・ケラー 著, 恩藏直人監修, 月谷真紀訳(2014) 『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 基本編』丸善出版社。


松井剛監訳(2015) 『ソロモン 消費者行動論』丸善出版社。

正垣泰彦(2011) 『おいしいから売れるのではない売れているのがおいしい料理だ』 日経BP社。
齊藤孝浩(2018)『ユニクロ対ZARA』日経BP。

経営戦略論

網倉久永・新宅純二郎(2011).『マネジメント・テキスト 経営戦略入門』. 日本経済新聞出版社
沼上幹(2008). 『わかりやすいマーケティング戦略 新版』. 有斐閣アルマ
沼上幹(2009). 『経営戦略の思考法』. 日本経済新聞出版社。

全社戦略周りは最近教科書が強化された印象。
松田千恵子(2019). 『グループ経営入門 【 第 4 版 】 ——グローバルな成長のための本社の仕事』. 税務経理協会
牛島辰男(2022). 『企業戦略論 : 構造をデザインする』. 有斐閣

会計学

矢部謙介(2017). 『武器としての会計思考力』. 日本実業出版社
大手町のランダムウォーカー(2020). 『世界一楽しい決算書の読み方』. KADOKAWA
矢部謙介(2021). 『決算書の比較図鑑』. 日本実業出版社
林總(2012). 『50 円のコスト削減と100 円の値上げでは、どちらが儲かるか』. ダイアモンド社
高橋賢(2015). 『テキスト原価会計 第2版』. 中央経済社

コーポレート・ファイナンス

砂川伸幸(2001). 『コーポレートファイナンス入門〈第 2 版〉』. 日本経済新聞出版

人的資源管理論

組織行動論

組織設計論

イノベーション論

生産管理論

立地・国際経営

経営史と経営学史

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