イノベーション・マネジメントや技術経営の定番教科書5冊

教科書ガイド第3段はイノベーション・技術経営(MOTとも言います)の総論系テキスト編です。この領域は今のところ近能・高井(2011)が決定版としてのわかりやすさを誇るので,特にこだわりがなければこのテキストを中心に勉強し,他の本は補助教材として使うのが良いかと思います。

近能善範・高井文子(2011)『コア・テキストイノベーション・マネジメント (ライブラリ経営学コア・テキスト)』新世社。

一冊の本としての流れとまとまりがよく,この領域の決定版テキストとしてお薦めできます。僕も自分の授業の参考文献に指定しています。やや製造業を重視している傾向があり,サービス産業におけるイノベーションについてはちょっと読み替えが必要な部分もありますが,現状読みやすいテキストNo.1だと思います。

原拓志・宮尾学編(2017)『技術経営 (【ベーシック+】)』中央経済社。

最近出た入門テキストです。技術経営・イノベーション・製品開発を全200ページに詰め込んだ薄くて読みやすいテキストになっています。専門としてというよりも専門外分野として技術経営についても少し知っておきたいという場合は近能・高井(2011)は少し分量が多いかもしれませんので,そういう場合にはこの原・宮尾編(2017)がオススメです。

類書と比較すると,第7章・第8章あたりの製品開発プロセス周りの書き方が特に良いと思います。また,最後の第12章でソフトウェア開発を独立した章としてとりあげているのが特徴的です。

延岡健太郎(2006)『MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト)』日本経済新聞社。

近能・高井(2011)が出てくるまでは,体系だって書かれているテキストはこの延岡(2006)が定番だったと思います。2×2による概念分類の整理の仕方は今でも参考になりますので,論の進め方や概念の分け方に注意しながら読むのが良いと思います。同じ著者による,延岡健太郎(2011)『価値づくり経営の論理』も併せて読むことをお薦めします。

一橋大学イノベーション研究センター編(2017)『イノベーション・マネジメント入門(第2版)』日本経済新聞出版社。

第2版になり,非常に分厚くなった一橋大学イノベーション研究センター編イノベーション・マネジメント入門。多数の筆者が書いているので,まとまりにかける部分もあるのですが,内容は今回紹介するテキストの中で最も高度になっています。大学院入試対策~修士1年生の副読本向けぐらいのレベル感だと思います。章によって読みやすさというか,引用文献を参照しないといけない程度が異なるのと,経営学的な観点だけでなく,経済学や政策・制度の観点の章もあるので,興味のある章から読む読み方が良いと思います。また,このレベルになると引用文献にあたることは必須です。ごりごり文献を探索しましょう。

ここまで高レベルに行くなら,もう少し(例えばオックスフォード・ハンドブックのような)文献網羅系のテキストになるとプロ必携のテキストになった気がするのですが,要求しすぎでしょうか。

藤本隆宏(2001)『生産マネジメント入門〈2〉生産資源・技術管理編 (マネジメント・テキスト)』日本経済新聞出版社。

技術経営というよりも生産管理のテキストなのですが,製品開発の話も登場していますので一応ご紹介しておきましょう。藤本先生の本の特徴は,詳しすぎる図を見て「なんだこれ・・・」と楽しむあたりでしょうか。所々非常に高度になったり,研究者目線になりすぎたりする部分もあるので,わからないところは諦めて飛ばし読みで対応するとよいでしょう。

その他

野城智也(2016)『イノベーション・マネジメント: プロセス・組織の構造化から考える』東京大学出版会も本来総論系として紹介すべきテキストなのですが,未読のため文献名を挙げるにとどめさせていただきます。読んだらまた追記します。

また,オープン・イノベーションなどイノベーション・マネジメントの中でもさらに各論のテキストもありますので,発展編としてそのうち紹介したいと思います。

これまでの教科書紹介記事

 

タイトルとURLをコピーしました