状況の変化を読むのは難しい

来年度の2年生向け少人数科目「研究・発表の技法」の募集期間(学生がそれぞれ希望の先生に応募する)が昨日まででした。まだ私の手元に学生の応募用紙は回ってきていないのですが,私は以下のような募集要項を出していました。

テーマ:新規産業に関する各種情報収集と調査
本講では新規産業の成立に伴う情報収集方法を学びます。今年度はカジノ産業を題材とします。日本ではカジノ産業は法的に禁止されている状況にありますが、国会議員を中心として日本にもカジノを作ろうとする動きがあります。もちろん、依存性の問題や周辺地域の治安の問題などの懸念点もありますので、実際に可能になるかどうかは現在のところ不透明な状況です。このようなカジノ産業の成立可能性について検討するという作業を通じて、本講では様々な情報の収集方法を学びます。具体的には、一般雑誌記事・新聞記事・証券会社やシンクタンクのレポート・公統計・各種議事録・書籍・論文などの資料の集め方を学びます。また,集めた情報を要約したり加工したりすることを学ぶと共に,パワーポイントを用いた発表練習を行います。
使用テキスト:木曽崇(2014)『日本版カジノの全て』日本実業出版社,を基礎資料として用います。

一応宮城県も,仙台市とか名取市とか,空港近辺がIRリゾートの候補地にあがっているようです。今の臨時国会に出すほど優先度の高い法案でもないだろうと思っていたのですが,ちょっとニュースを見ていないうちに昨日衆院で審議入りになってしまいました。議員立法恐るべし。科目の募集要項の内容が授業開始時にはすでに時代遅れになってしまうというおもしろ現象が生じるのかどうか,見守りたいと思います。

今年度のこの科目はソーシャルゲームやオンラインゲーム業界を取り扱っていたのですが,せっかく学生達が業界構造をまとめ終わったところでポケモンGOが始まってなんとも間の悪い感じになったりと,時流に沿ったテーマを選んでいるような,ちょっと出だしが遅いような,という状況が2年連続になりそうです。

間の悪いことというのはいろいろこれまでも経験していて,2012-2013年頃に書いていた博士論文のイントロで,航空法の成立当初のアネクドートを書いた時には,まさか今のドローン関連法制がこんなことになるとは思っていなかったです。一言ぐらい無人航空機に言及しておけば良かったば預言者ぽくてかっこよかったのに・・・(論文は予測をするものではないのですが)。

そういえば昨年の今頃は民泊サービスの合法化について,今年の今頃(今の臨時国会)に決まるだろうと読んでいたのですがこっちはお流れに。授業で「来年の授業の頃にはもうちょっと状況が落ち着いていると思うよ」とか言っていたのですが見事に外しました。

自分に関係のないところで気の毒だなと思ったのは,あれだけ労力をかけたTPPがご破算になりそうということで,条約に関わられていた方々のご苦労を思うと。別の枠組みで議論の内容が生きるといいのですが。

新しい出来事に近いテーマで研究や教育をやろうとするとどうしてもこの種のことが起きてしまうので,自分の予測のあてにならなさを自覚することが多いですね。予想屋さんではないので外すのは構わないのですが,研究者として自分の記憶を後から改竄してしまうと推論の反省ができなくなってまずいので,以前していた予想は何だったかとか,予想もしていなかった出来事は予想していなかったと書いておこうと思います。

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