学術書の出版について学ぶための参考文献

前回のエントリを書いてから,何冊か読んで,学術書の出版について勉強したので備忘録代わりにブックリストを残しておきます。

なぜ書籍には事前の査読制度も事後の評価制度もないのだろう
連休前から,そこそこ評価されている本だとか,非常に高名な先生の本に,残された貢献できる余地を見つける・・・というかまあ有り体に言ってけちを付ける作業をしていて,「自分の読み方が悪いのか」「いやどう読んでもこれは本の方がおかしいだろう」という...

佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留(2011)『本を生みだす力』新曜社。

ハーベスト社・新曜社・有斐閣・東京大学出版会の4社比較のケーススタディ。1人出版社のハーベスト社,小規模な新曜社,大規模な有斐閣,大学出版である東京大学出版会を比較している。小規模な出版社がどうまわっているのかという話も面白いが,特筆すべきは有斐閣のテキスト志向(有斐閣アルマの誕生など)に関する記述部分だと思う。

鈴木哲也・高瀬桃子(2015)『学術書を書く』京都大学学術出版会。

鈴木哲也氏は京都大学学術出版界の編集長。博士論文を元にした書籍が,博士論文それ自体とどのように異なるのか,見出しの付け方などの具体例を元に,「二回り外,三回り外の専門家に向けた本」の書き方を教授。

橘宗吾(2016)『学術書の編集者』慶應義塾大学出版会。

第3章「審査とは何か」や第4章「助成とは何か」は編集者と著者がどのように生産的な関係を築くことができ,どのような場合に壊れやすいかを述べていて,非常に参考になった。脚注を含めて必読。レファレンスもしっかりしているので,とりあえず1冊読むならまずはこの本から。なお,同氏による北海道大学出版会における講演のPDFがウェブにある。
橘宗吾(年不明)「学術書を書くということ」http://hup.gr.jp/modules/xfileuploader/upload/img/up010.pdf

その他インターネットで読めるもの

  • 筒井淳也(2017)「学術書が出版されるまで:研究者の側からみた書籍出版の意義とプロセス」『理論と方法』32(1),156-162,https://doi.org/10.11218/ojjams.32.156
  • レポート:東京堂ホール・トークイベント「哲学者と編集者で考える、〈売れる哲学書〉のつくり方」(2019年3月10日) | フィルカルhttp://philcul.net/?p=876

その他,インターネットで読めるものとして上記2つを挙げる。フィルカルの記事では「1500部,出来高500万円」という数字が具体的でよいと思う。筒井先生の方では「初刷 2000 部だと「一般の読者層も意識した本
づくり」をする必要がある」という証言がある。

いろいろ読んで結局未だにわかっていないのは,経営学の場合,隣接領域に「ビジネス書」というジャンルがあるので,そことの兼ね合いが中々難しいなと思っている。この辺,売れっ子の先生がハウツーを残してくれるとうれしい。

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