知らないケースだったのでメモ。「乳児用液体ミルクプロジェクト」について。
change.orgの署名活動のページでは署名の募集開始が2年前と書いてある。2014年頃からの活動のようだ。2014年12月に1万名。2016年10月27日現在では41763名となっている。
お出かけや災害の時に赤ちゃんがすぐ飲める乳児用液体ミルクを、日本でも製造・販売してください!
2015年から国内流通を目指す研究会が発足,だが実質的に政策課題となったのは熊本の地震以降なのだろうか。熊本の地震の時には小池百合子議員(当時)がフィンランドからの輸入に際して働きかけを行っている。
興味深いなと思ったのは下記の記事だ。このツイートから記事のことを知った。
液体ミルクの日本での普及を目指してる1人の女性の話が今日の毎日新聞に載ってたんだけど、各企業は門前払いで金子恵美衆議院議員に相談したら「液体ミルクで男性の育児参加がしやすくなるって観点は良いですね」「バイアグラの認可が直ぐ下りたのは男性事だからです」って地獄の釜の蓋が開いてた
— chloeyuki (@chloeyuki) June 22, 2016
念のため元の記事にあたっておくと,次のような内容。
「水説:液体ミルクを日本に=中村秀明」『毎日新聞』2016.06.22 東京朝刊 3頁
今週には、乳児を抱える金子恵美衆院議員(自民)にサンプルや資料を送った。この問題を切実に考えてもらえるだろうと思った。
「液体ミルクが普及すれば、男の家事や育児への参加にも大きな弾みになるはずです」と意見すると、「その視点はいいですね。バイアグラの例もあります」との答えだった。「あの薬は『男性事(ごと)』にしたので認可がさっさと進んだそうです」。
いろいろと読んでいくと,「世界のミルクを日本へ☆USA発☆Milk for Japan」というブログでは東日本大震災の際に海外から液体ミルクを届ける活動をしている。海外活用事例の中に「調乳に慣れていない男性でも」という上述の論点もでてきている。
このブログを読んでいると,どうも震災の度に話題にはなっていたらしく,古くはノーラ・コーリ(1994)『海外で安心して子育てをする本』ジャパンタイムズ という本が海外には液体ミルクというものがあることを日本語で紹介していて,1995年の阪神大震災の後にも国内製造を求める声があったものの立ち消えになっていたようだ。
今月に入ってから男女共同参画会議(第50回 平成28年10月7日(金))で話題に上ったことで再び各種報道やインターネット上の議論を賑わせている。男女共同参画会議の議事要旨を読むと,宗片惠美子氏(特定非営利活動法人イコールネット仙台代表理事)が東日本大震災の時の液体ミルクについての紹介を行っている。
「避難所の支援に入った際、乳幼児を抱えた母親から、母乳が止まった、あるいはミルクを溶かすお湯がない等の数々の訴えがあった。宮城県石巻市では、フィンランドから乳幼児向けの液体ミルクが支援物資として届けられ、大変助かったという声が聞かれた。しかし、この液体ミルクは現在、日本では流通しておらず、手に入れることが難しい。災害時はもちろん、平時においても働く母親たちへの支援の一環として、また、男性の育児参加を進める上でも有効なものだと思う。」(太字は引用者による)
ということで,金子議員のフレーミングを参考にした上での発言と思われる。その発言を加藤勝信内閣府特命担当大臣(男女共同参画)がしっかり受け止めると発言,「男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会」の会長に指名された家本賢太郎氏(株式会社クララオンライン代表取締役社長)も個人的に関心を持っていると賛意を示した,という経緯。
上述のツイートにもあるように,男性の問題にならないと政治が動かないという現状は歯がゆいものがあるだろうが,それでもなお金子議員の助言は,現実を受け止めた上で政治・行政を動かす一歩の踏み込み方を示す貴重なアドバイスだったのではないだろうか。
国内メーカーの意向がまだ示されていないのが気にかかるところではあるが,特に強固に反対するアクターはいないと思うので,このまま進展することを願う。
参考 BuzzFeedJapan 母乳vs.粉ミルクの論争だけではなく ひとりの母親が広げる「液体ミルク」の可能性