先月の研究会でゲスト参加されていた修士の学生さんが,DC1に出すんですという話をされていまして,研究テーマの決め方についての話になった場面がありました。そのときにした話のメモを貼っておきたいと思います。
このメモは最近書いた物ではなく,日付によると2012年3月ということなので,自分が博論のテーマ決めという長くなやんでいた問題から解放された後に書いたものです。他人がこの文面を読んでどう感じるかどうかはわからないのですが,僕はこの頃の自分の状況の思い出があるので今読んでも何か,ああやっととりあえずやることがある状態になったというか,上原先生のように「これをやらなければ生きていけない」というほどではないにせよ,自分の人生にひとまず5年10年ぐらいは使い途がありそうだと感じだした,そのころの状況を思い出させる点で思い出深いメモの1つです。
いろいろある博士論文のテーマの決め方
上に書いてあるほど理想主義的、下に書いてあるほど現実主義的
阿部謹也派 (further info (hit-univ library))
これをやらなければ生きていけない、というテーマを研究テーマとする
島本実派
日頃ついついやってしまう、というようなことが自分の本当にやりたいこと
沼上幹派
・将来的にテーマが変わる可能性を念頭に入れながらも、決めるときは一生のテーマのつもりできめる
・大きな絵(一生のテーマ)を描きながらも、その中で今(博士論文・修士論文)の自分でできる範囲のテーマ設定をする
・見本例をもつ
→現実には現実的な意思決定をしながらも、同時にコミットメントがないと進まない要素や,構想がないと広がっていかないという要素が入っている
伊丹敬之派
とりあえずテーマに入ってみて、それから考える
若いうちはダメだったら次、それを繰り返す
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Hajime Mar. 2012 (立ち位置としては沼上-伊丹の間ぐらい)
realistic problem
- 主に事例研究における事例選択について
- 結果変数が取れないほど最新の事例は研究設計が難しい
- 逆にこれから全く目がない業界もテーマの応用可能性を検討した時に何かしら問題があるかも(paticular historical contextの影響が強すぎる,など)
- →基本は説明したい結果変数が明確に存在していること,できれば比較対象が存在すること。
- →問題設定か対象業界のいずれかからこれからも重要な問題を引き出せる可能性がのこっているとbetter
- (手を変え品を変え同じ研究対象にいろいろな問題設定ができそう,あちこちの業界に類似の問題が見受けられそう,とか)
- 結果変数が取れないほど最新の事例は研究設計が難しい
- 自分の理論的貢献を出せる余地はどこか
- 散々言われることだが,実践家のやったことをただ記述するだけでは実践家の貢献をまとめただけ,現象の見方・考え方を提供するのが研究者の役割
- further info 沼上(2000) 『行為の経営学』白桃書房。加藤(2011)『技術システムの構造と革新』,白桃書房。
- 屋上屋,メタ能力に注意(現象に対して大きすぎるナタで切り倒してしまわないように)
- social constructed,のような説明は何でも説明できてしまうために,使いどころの難しいツールになりがち。
- メタ能力やリソースのように,一歩原因変数側にひいているようでトートロジーに等しいような概念を持ちだしている時も注意
idealistic view
ちょっと先の具体的状況を考えてみる
- 40代で科研A級のプロジェクトのリーダーになった時に,誰か自分にとって大事な人(研究者でも良いし,企業勤めの友人でもいい)に話してみて,「それは重要だね」と言ってもらえるような問題設定はなんだろうか。
- 今はリソースや研究能力の制約上できないけれども,次の次ぐらいで到達したいテーマはなんだろうか。
- そのテーマに若干関連性を残しつつ今の自分でできる研究はなんだろうか。