調査学習:組織ストレスについて

このブログは尾田ゼミの学生の執筆の元,教育の一環として投稿・公開されています。

現代人は様々なストレスを抱えているといわれていますが、今回は「組織ストレス」について焦点を当て、調べていきたいと思います。

組織ストレスとは

組織におけるストレスに関する用語は、英語で「organization stress」「job stress」「occupational stress」などさまざまなものがあり、日本語では「組織ストレス」「職務ストレス」「職業ストレス」「職場ストレス」などと訳されます。しかし、これらの用語は概念上の区別が明確ではないため、以上のような語を「組織ストレス」と一括にすることにします。

組織や職場において発生するストレスを「組織ストレス」として定義することにします。

組織内ストレッサ・組織外ストレッサ

「組織ストレス」の代表的なモデルとしてクーパー(Cooper,C.L.)とマーシャル(Marshall,J.)の研究があります。彼らの研究ではストレスの要因(ストレッサ)を組織内ストレスと組織外ストレスに分類しました。では組織内ストレッサと組織外ストレッサとがどのようなものか以下にまとめました。

組織内ストレッサ

  1. 職務そのもの:物理的に不適当な仕事条件、過剰な仕事量、締め切りのプレッシャーなど
  2. 組織内での役割:役割葛藤、役割曖昧性、人々への責任、組織と組織間または組織内での葛藤など
  3. キャリア開発:地位が高すぎること、地位が上がらないこと、雇用が保障されないこと、昇進可能性がないことなど
  4. 職場の人間関係:上司や部下、同僚とうまくいかないこと、責任が重すぎることなど
  5. 組織構造や組織風土:組織の意思決定にほとんどあるいは全く参加できないこと、予算などできることに制限があること、職場の方針など

 〈補足〉

  • 役割葛藤:カーンらによれば「ある圧力に従えば、他の圧力に従うことがより困難になるような、2つ以上またはそれ以上の圧力が同時に発生る状態」と定義されています。たとえば、母親が仕事と子育ての役割で葛藤することなども役割葛藤といえます。
  • 働く女性のストレス:近年では女性の社会進出が活発化されている中で「働く女性のストレス」も研究されています。代表的なもので言えば、セクシュアル・ハラスメントや性差別賃金、性による昇進差別であるグラス・シーリングと呼ばれるものなどがあります。

 組織外ストレッサ

  1. 家庭の問題
  2. 人生の危機
  3. 経済的困窮

組織外ストレッサは、夫婦関係や子供の成長といった過程の問題、家族が重い病気にかかったり死亡したりするといった人生の危機、失業や賃上げなどによる経済的困窮などがあります。

 ストレスイン

ストレスを受けた後に生じる結果としての反応をストレスインといいます。ストレスインの反応としては主に3つに分けられます。

胃潰瘍・十二指腸・気管支喘息・高血圧・自律神経失調症・アトピー性皮膚炎などの生理的反応。神経症およびうつ病などの心理的反応。喫煙・飲酒または、欠勤・怠業・遅刻などの行動的反応などです。

ストレスへの対処法

以上のような多様なタイプのストレスが存在することからストレスマネジメントという考え方が広まっています。

ストレスマネジメントとは、引用すると「ストレッサ・コーピング過程を通じて、ストレッサを個人にとって適度な水準にするための介入方法であり、疾病や行動上の問題の改善だけでなく、それらの予防という観点からも介入が行われている(堀,2007)。」です。

つまり、職場の人間関係や仕事など様々な要因によって健康や仕事に支障をきたす可能性のあるストレスに対処するため、様々なスキルを活用して適度なストレス状態へとコントロールする、ということです。

ではストレスマネジメントにはどのようなものがあるのでしょうか。

  •  気晴らし型:運動、趣味、深呼吸、十分な睡眠をとる、といった気分転換・リフレッシュなどのストレス解消法と呼ばれるものです。これらは日常の苛立ちごとによるストレス解消に対しては有効な対処行動と言われています。
  • 認知的再評価型:直面している困難な問題に対して、見方や発送を変えて、よい方向に考える、あるいは距離を置くなど、認知の仕方を再検討して新しい対応の方法を探すような対処行動です。
  • 社会的支援探索(ソーシャル・サポート):問題に直面したとき、上司や同僚、家族、友人などに相談したり、アドバイスを求めたりする対処行動です。実際に職場の上司や同僚からのソーシャル・サポートの程度が高いほど、バーンアウト(意欲の低下、情緒不安定、自分に対する無力感)の傾向が低いと言われています。また家族からも家事の分担などのサポートがストレス軽減のために重要になります。

 また、2006年に厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を発表しました。事業者は「心の健康作り計画」を策定し、計画に基づいて「メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供」「職場環境等の把握と改善」「メンタルヘルス不調の気づきと対応」「職場復帰における支援」の4項目を示しました。

まとめ

組織ストレスには様々なものがあり、それによって個人の心や体に影響が加わったり、場合によっては会社の業績にも影響を与えることもあるようです。そういったなかで、ストレスマネジメントの考え方は広まりつつあります。個人、そして企業などの組織でもストレスには向き合い、対処をすることがこれからは大切だと思います。

参考文献

・開本浩矢(編)(2019)『組織行動論』中央経済社

・羽岡邦男(2002.2)『労働ストレス研究職場ストレスに関する一考察』「政治学研究論集」15,69-83

・社会福祉士国試 学習部屋(https://fukufuku21.blogspot.com/2018/04/20180423.html20191029日最終アクセス

・堀匡(2007.10)『大学生を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発』広島大学大学院教育学研究科紀要 56,283-284

・厚生労働省「e-ヘルスネット」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-049.html)20191030日最終アクセス

・坪井康次(2010)『ストレスコーピング自分でできるストレスマネジメント』心理健康科学 62,2-3

教員より

 ゼミでは,組織ストレスについての報告を聞いた後,クーパー&マーシャルの元のモデルを確認し,個人特性によってもストレス反応が出る場合と出ない場合がある(例えばビッグ・ファイブの神経症傾向などが関わってくる)ことを確認したり,あるいはストレスマネジメントはなぜこの3つに分類されているのか,概念整理について討議を行いました。

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