論文で使おうと思ってマーケティングの入門レベルの教科書を15冊ほど読んだのですが,ネタがボツになった(悲)のでブログに放出します。経営学者がガチで選ぶ,初心者(学部1年生・2年生)向け,独学におすすめなマーケティング教科書(入門レベル)です。
どうやって選んだ15冊?
まずは調査対象となる15冊をどう選んだのかについて。新しくて最新の知見が載っている教科書?違います。教える立場のプロである経営学者の感覚として,重要なのは改訂されていることです。書き手であるマーケティングの先生は一生懸命教科書を書くのですが,「やっぱり直したいところ」「やっぱり書き足したいところ」「時節と合わなくなった」キリがありません。そこで改訂版を出すときにはいろいろと修正をするわけです。
改訂版を出すということは,①ある程度初版が売れている,②つまり継続的に授業などで使っている可能性が高い,③授業で教えるうちに気づいた問題点などが初版から改善されている可能性が高い,ということで,ベストではないにせよベターな教科書になっているに違いない…こう推論して集めました13冊。
出版年の古い順にご紹介しましょう。
- 沼上幹(2008)『わかりやすいマーケティング戦略 新版 (有斐閣アルマ)』有斐閣。
- グロービス経営大学院(2009)『改訂3版 グロービスMBAマーケティング』ダイヤモンド社。
- 石井淳蔵・廣田章光編著(2009)『1からのマーケティング 第3版』碩学舎。
- 石井淳蔵・嶋口充輝・栗木契・余田拓郎(2013)『ゼミナール マーケティング入門 第2版』日本経済新聞出版社。
- 井原久光(2014)『ケースで学ぶマーケティング[第2版] (MINERVA TEXT LIBRARY)』ミネルヴァ書房。
- F.コトラー・K.L.ケラー(2014)『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント基本編 第3版』丸善出版。
- 大山秀一(2016)『これだけは知っておきたい「マーケティング」の基本と常識 改訂版』フォレスト出版。
- 和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦(2016)『マーケティング戦略 第5版 (有斐閣アルマ)』有斐閣。
- 新津重幸・庄司真人(2017)『マーケティング論 改訂版』白桃書房。
- 日経デジタルマーケティング(2017)『マーケティング基礎読本増補改訂版 (日経BPムック)』日経BP社。
- 野口智雄(2017)『ビジュアル マーケティングの基本〈第4版〉 (日経文庫)』日本経済新聞出版社。
- 草野素雄(2017)『入門|マーケティング論(第5版)』八千代出版。
- 安原智樹(2018)『この1冊ですべてわかる 新版 マーケティングの基本』日本実業出版社。
これらに加えて,改訂版ではないのですが定番っぽいものとして+2冊。
- 小川孔輔(2009)『マネジメント・テキスト マーケティング入門』日本経済新聞出版社。
- 久保田進彦・澁谷覚・須永努(2013)『はじめてのマーケティング (有斐閣ストゥディア)』有斐閣。
独学に適しているのはどれ?
いろんなタイプの人がいると思うので,いくつかタイプ分けをしてご紹介しましょう。
マーケティング,まだ好きかどうかわからないんだけど?
雑誌感覚で読める!でも一通り書いてあるということで僕が感心したのは日経デジタルマーケティング(2017)『マーケティング基礎読本増補改訂版 (日経BPムック)』日経BP社です。最初の一冊はフルカラーのこの本にしておくと,興味を持ちやすいと思いました。
本を読むのは苦手!長い文章嫌い!楽に読めるのはどれ?
なんと贅沢な,そんなあなたには,野口智雄(2017)『ビジュアル マーケティングの基本〈第4版〉 (日経文庫)』日本経済新聞出版社がおすすめです。安い(1080円)し薄いし,文字も少ないけれども必要なことはきっちりまとめてあります。
理論だけじゃなくていろんな事例が載っている教科書が良い!
独学する上で大事なことは教科書に理論も事例も両方載っていて,それさえ読めば完結しているということが大事ですね。この点では,
- 小川孔輔(2009)『マネジメント・テキスト マーケティング入門』日本経済新聞出版社
- 石井淳蔵・嶋口充輝・栗木契・余田拓郎(2013)『ゼミナール マーケティング入門 第2版』日本経済新聞出版社
の2冊が優れていると思いました。小川(2009)の方が独特でおもしろい,石井他(2013)は教科書を作るのにかかっている手間がすごいというイメージです。どちらも分厚い本格的なテキストなので,2冊買うよりはどちらか1冊をしっかりと読み込むことが大事だと思います。
仕事でマーケティングの担当になった!学生向けの教科書も一冊読んでおきたい!
「急いで読むよ!何冊か読むことになるけど,最初のとっかかりを1冊を選ぶとすればどれ?」という忙しい若手社会人向けに選ぶなら,安原智樹(2018)『この1冊ですべてわかる 新版 マーケティングの基本』日本実業出版社をざっと読むのが良いかなと思います。図も多いし,学問寄りというよりは実践向きの一冊。
おまけ:初心者向けじゃなくてもっと本格的なのが知りたいんですけど?
初心者のくせに背伸びしたがるあなた,いいから小川(2009)か石井他(2013)をまずは丹念に読みなさいといいたいところですが,背伸びしたい人には挫折も必要でしょう。上記のリストにはありませんが,池尾恭一・青木幸弘・南知惠子・井上哲浩(2010)『マーケティング (New Liberal Arts Selection)』有斐閣に挑んでみるといいとおもいます。学部上級生向きです。