社会規範の問題について検討したいのだけど,調べていると結局のところお金や財源の問題のようなので,お金関係の下調べをゆるゆるとしている。
(この業界は財源補助が無いことには事業として成立しないので・・)
清水谷・野口(2004),p.57にあった2002年調査。保育士の賃金カーブを推定している。
公立の保育士の傾きが高くなっているけど,これは昔保育士が行政職の俸給表に準拠していたことによってこうなっていたらしい。今はというと,福祉職になって,勤続10年ぐらいで昇給はとまるようになった。前出のデータはミクロデータを使ってかなり細かく推計しているので,近年の状況についてなかなか同じような調査データはない。中村(2012)p.120から2011年の賃金構造基本調査を元に行った平均給与の算定を孫引きすると,だいたいの水準はわかる。
職種 | 年齢(歳) | 勤続年数(年) | 給与月額(円/月,諸手当含む) |
保育士 | 34.7 | 8.4 | 220300 |
幼稚園教諭 | 32.1 | 7.5 | 225800 |
福祉施設介護員 | 37.6 | 5.5 | 216400 |
ホームヘルパー | 41.9 | 5.4 | 217900 |
全職種平均 | 41.5 | 11.9 | 323800 |
看護師 | 37.7 | 7.4 | 326000 |
保育所を増やしていかないといけない,けれども,このままの水準で増やしても,保育士が(一生食べていける)職業として成立するのかどうかはなかなか厳しいんだろうなという感想。行政職のように年功的に上がる必要は無い(一定の期間を経た後は,年をとるほど熟練するわけではない)にせよ,絶対水準は結構上がっていかないとつらそう・・・。まぁ,水準を上げていくためにも保育所や人員を増やして,政治的な力は強めていくしかないのだろう。
(このままだと保育所の増加によって保護者の女性が社会進出しても,性別間格差が階級間格差(いわば保育士から保護者への所得移転しているようなものだ)になるだけのような気もして,一気に解決はできないにしてもなんだかもやもやごにょごにょ・・・。)
国の予算推移。もちろん,保護者からの保育料とか,他の予算からもでてるので,保育所に使われているお金の総額ではないし,
賃金以外にも一般管理費とかにも使われるので,対応関係はとれてないんだけど。まあ規模感を掴むために。
保育所運営費(当初予算,単位100万円) | |||
2009 | 2010 | 2011 | 2012 |
340,102 | 353,262 | 374,382 | 396,225 |
4000億円行かないぐらい。厚生労働省『平成24年版厚生労働白書』資料編のp.19より。親と行政が1:1で負担というのが元々のルールで,ただし親の所得に応じて行政が減免措置をだすので,親の負担はだいたい全体の4割ぐらい?(この実際のデータがどこかにあるはずなのに探せていない),どのみち全体で1兆はいかないのかな。
清水谷諭・野口晴子(2004)『介護・保育サービス市場の経済分析』東洋経済新報社。
中村強士「深刻な保育士不足」全国保育団体連絡会・保育研究所編『保育白書2012』ちいさいなかま社,pp. 118-122。