大学生が使えるお金は限られている。大学生は時間に余裕はあるかもしれないが,その時間も大学4年間という時間を”買って”できた時間である。お金や時間といった資源が限定された状態で,将来への投資をする。お金を獲得し,お金で買うことのできる物や時間を買い,お金をかけて知識やスキルを獲得し,稼げる人材になっていくプロセスであるといえる。
もちろん,学習はお金のためだけにするわけではないが,投資行動であると限定することによって見えてくる構造もある。投資行動として大学生活を見た場合に,どのように投資するためのリソースを獲得する方法があるか,どのような場に試行錯誤の挑戦する機会があるかについて述べていく。
通常の事業投資だと厳格にリターンが求められるが,学生時代の人的投資は厳格な期限や目に見えるリターンを設定しづらい(生涯をかけてリターンを稼いでいくための投資)。そのため,投資用に入手できる資源も限られる。大体以下の4通り。
(以下,あまりに普通の内容過ぎてかき起こす元気がなくなったので箇条書き。オリジナリティの要素が若干あるのは最後のスラック資源の部分だけだとおもう)
1.親からの支援(出資者への説明と依頼)
- どのようにお願いするか 説明責任の果たし方,家計予算と決算,目的の明確化
- 財務会計(出資者に報告するための会計)としての家計簿と,管理会計(自分のお金を自分が管理するための会計)としての家計簿は作り方が違う
- どの程度お願いするか
- 自分以外に他にどのように使われる予定のお金か。
- 親兄弟他者との問題,自分の中での正当化の問題。
- ■なぜ日本では親が子どもの教育投資を支払うことが社会的に当然のようになっているのかということはいろいろな社会的問題を含んでいるので考えてみるといいだろう
- 裕福だが子の希望に無理解な親にあたった場合
- 世代を超えた格差の継承
2.自分での調達
- アルバイト
- 割に合わないが,容易に調達できるのが特徴
- 学費を払って4年間の時間を買っているのに,それをアルバイトで切り売りするのは単価の面からは割に合わない。
- 授業は学費だけでも,90分で2500円ぐらいかかっている。
- 生活費も加えれば学生生活を1時間維持するためにはかなりコストがかかっている
- 予算制約が他の悪影響を生む場合には予算自体を拡張した方が良いので,その点ではアルバイトは手軽な資金調達手段
- (予算内で生活するために手間がかかりすぎる,お金がないことがストレスになりすぎるなどの事情)
- その他,アルバイトから得られる金銭以外の報酬(スキルや交友関係)など。
- 貸与型の奨学金
- 市中より低い金利,借りるなら他の選択肢はあまりない。
- JASSO1種3万×48ヶ月で144万,このほか,私立大学だと自宅生5.4万(4年で259万),自宅外生6.4万(4年で307万)の選択肢
- 150万の借金の返済は,定職についていればそれほど大きなリスクではない。
- ダウンサイドリスクはほぼない。収入がないときには返済猶予の申請をするとか,書類手続きができれば,破産リスクはない。
- ただし,収入がない状況では書類手続きもできないぐらいの他の問題(病気等)を抱えている可能性がある。単体では問題が無くても,複合的には問題があるケース
- アップサイドのリスクはある。今後の別の借り入れ余地が減ることで,追加投資が必要な他の選択肢が選択できなくなる可能性が高い。
- 大学院や海外留学などを検討する場合,ダブルスクールで資格を得る場合等々
3.支援制度の活用(学生に使われることを意図しているリソース,ただし宛名が空欄,申請式)
- 使われることは意図しているが,配られるわけではなく,自分から申請しないといけない
- 金銭的支援:給付制の奨学金
- 知識:図書館の使い方,他の図書館(国会図書館,公共図書館,他の大学の図書館)
- 物的支援:何かあるか?大学によっては100円朝食とか。
- いずれについても,使うのに躊躇しないこと。初回利用には精神的にも労力的にも負担がかかるので,はやめに試してみて労力とリターンの感覚をつかむこと。
4.スラック資源の探索
- スラック(余剰資源,slack)
- 経営学では通常組織内の余剰資源のことを指す。ここでは社会全般で使われていない資源のこと
- スラック資源は,緊急時のバッファーになる他,イノベーションや新規事業の源泉となることがある。
- 『銀の匙』に見る起業プロセスとスラック
- 荒川弘による農業高校マンガ。学校生活マンガだが,途中から自分たちで事業を始める
- 売りに出ているが買い手の付かない牧草地を,他人が一時的に借りて事業に使う(12巻)
- ブタを余っている土地に放牧して育てる
- 牛を使って,荒れ地の雑草刈り(牛のえさ代節減,荒れ地の整備代節減)
- 余剰資源である牧草地を使うことで,通常よりも採算ラインが下がっている
- 状況によって得られる資源や余り方が変わる,特に立地は大きい
- 都市になればなるほど,様々な種類の資源へのアクセス可能性は高まるが,同時にどのような資源にも相応の対価が求められる(スラックがない)
- 例)都心部では保育園の遊び場が確保できない。待機児童問題
- 例)中高生の自習スペース,喫茶店の回転率
- 逆に,都市部ほどあらゆる資源の利活用圧力が高まるので,サービス業が高スキル化したり,シェアリングサービスなどの新たなビジネスが生まれたりする
- 例)大学も,本来は学生が自発的に活動するための「たまり場」をどれだけ提供できるかが重要。
- 近年はやりの都市型・ビル型キャンパスでは提供しづらい
- くだらない使い方をされると(酒盛りや設備の破損など),大学は学習してそういう場を減らす方向に動く。この種の相互作用があることに注意
- その他のスラックの例
- 青春18きっぷ(空いている電車に追加的に乗客を乗せても,鉄道会社の追加負担は少ないので,こういう切符を出してくれている)
- バブル経済がはじけた後にはいろいろと損切りされたゴミが余剰資源として放置されていることが多い。ドットコムバブルで投資家は損をしたかもしれないが,通信インフラ整備は進んだ。