100万円かけたのにあと2千円が足らない:大学生の教科書代問題

ここ数日、大学生の教科書代について考えています。上手く書けるかわかりませんが、問題意識と部分的に解決するスキームについて書いてみたいと思います。

学費に含まれない数万円の教科書代

私立大学の1年間の学費や施設費などは合計すると100万円ぐらいになります。この中に教科書代は含まれていません。授業によって教科書は使ったり使わなかったりするので、個別に購入することになっています。

中学校や高校の問題集が千数百円であるのに対して、大学のテキストはもう少し高いです。安いもので2000円ぐらい、しっかりしたページ数の多いものは3000円。ゼミなどで使う洋書などでは1万円ぐらいになることもあります。

半期に10コマほど授業を受けるとして、全ての授業で2000円のテキストを買うとすると4万円。年間8万円ほどの出費が想定されます。親御さんに教科書をお願いできる学生もいますが、自分で支出する学生も多いことと思います。

大学生協の行っている学生生活実態調査によれば、自宅生の生活費は平均で月7万円弱、下宿生の生活費は平均で月12万円ほどです。そのうち、書籍費と勉学費の合計は月3千円台だそうです。月々12万円程度で生活している学生が4月と9月、年2回4万円を用意することは難しいものと思われます。

大学の教科書代というのは学生達にとって節約の対象となります。てっとりばやい解決策は、テキストを用いない授業を履修することです。あるいは、テキストを用いる授業であっても、古本を安く入手できることもあります。テキストが指定されている授業を、テキスト無しで履修して済ませることもあると思います。

100万円の教育投資が既に行われているのに、最後の2千円を出し惜しんで、その投資がゆがんでしまう。この構造は学生本人にとって損失であるだけでなく、そうやって充分に学生達が勉学に励まなくなること社会的な損失でもあると私は考えます。

大学生と書籍の望ましい関係は

逆に理想的な状況、目標とすべき状態を考えてみましょう。

身銭を切って本を買い、読む。これは大学生が大学時代に時間をかけて学ぶべきことでもあります。優れた本を選ぶことができるようになるためには、ある程度多くの本を買って読み、時には失敗しながら、痛い目にあって経験で学んでいく部分が大きいです。

定期的に本を読む読者を涵養することは、職業的な物書きでもある大学教員にとっても望ましいことのはずです。学術書や啓蒙書、新書などを大学教員は書きます。卒業後も本を読んでくれるような読者を育てることは、書籍市場を持続可能なものとして成立させていく上で重要な作業であると言えます。

授業でテキスト指定される本は、学生にとって学術的な本と付き合う入り口であるといえます。その出会いはポジティブなものとなるように設計されているでしょうか。全員に買うことを強制する以上、その本や授業から得られた内容が投資に見合う物だったかどうかは厳しく評価されます。例えば、わざわざ買わなくても済むような内容だった場合には評価は下がるかもしれません。自著を売る場合には利益相反を疑われるかもしれません。

どうやって解決するか

研究費を使って教員が教科書代を用意することはできないか?と最初僕は考えました。ところが、当たり前なのですが研究費は研究活動のために用意されているお金で、教育目的に使えないことがほとんどです。特に、同じ本を複数冊大量に購入することはNGとして明記されていることが多いです。

同様に、図書館も同じ本を大量には所蔵してくれないので、教科書向きではない・・・。

じゃあ自腹で用意するのはどうかと思いました。どのくらいの金額をかければ良いのかを計算してみました。

250人に2000円の本を用意するのにかかるのが50万円。
150人に3000円の本を用意するのにかかるのが45万円。

だいたい1つの授業あたり50万円ぐらい、大教室2つ持っている場合は100万円あれば希望する全員に教科書を用意することができます。

教科書を学生に貸し出し、4回ぐらい使えば、250人×4回でのべ1000人の教科書代を、本来200万円かかるところ50万円で済ませることができます(著者の儲けをダイレクトに削る行為ではありますが・・・)。

一応、無償で貸し出す分には著作権上の貸与権の問題は発生しないようです(たとえば学生からレンタル代を数百円とると書籍代を回収できるのですが、問題が多重に発生するのでこの選択肢は除外することになります)。

初期投資を自腹で出すのはかまわないのですが、これを持続可能な非営利事業にするには、各所からご支援を募る必要がでてきます。

ひとつは、そうして教科書の貸与をうけた学生に卒業後に寄付を募る方法があります。卒業生1000人の1%から3000円の寄付を得られれば3万円。5%なら15万円になります。

月の生活費が12万円の大学生にとっての2000円が難しい金額であっても、20代の社会人にとっての2000円はもう少し出しやすい金額になっているはずです。ファンベースが拡張され、年齢を重ねて所得が大きくなるほど2000円、3000円を出してくれる可能性のある人は増えていくはず・・・と見込んでいます。要するに、予算制約を世代間で融通することでなんとかできないかという発想になります。

その他にもいろいろ支援を募る手段は考えられるのですが、このあたりは、僕の場合は、ゼミ生の教材にしてもいいのかもしれません。

今は大学への着任前で状況が読みづらいこともあり(そもそも自分の授業を何人ぐらい履修して、教科書借りたい学生がどのくらいいるのか、など)、4月からすぐに実施できるかわからないのですが、教育経費について寄付を募って、授業やゼミでできることを増やしていくのは面白そうなので、ひきつづき考えていこうと思います。

2020/01/04追記:

ひとまず「ご支援のお願い」のページを作成し公開しました。

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