大魔王からは逃げられない

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ドラゴンクエストのような和製RPGの特徴のひとつに,最初のムラの近くのフィールドには弱い敵がいて,段々後半に行くに従って強くなっていくというような設定がある。

大学も,高等教育研究機関とはいえ一応は学校なので,発達段階に合わせて「がんばればできそう」ぐらいの課題に調整することが求められる。学生のモチベーションが維持されるように調整しようとすると,段々簡単な課題になりがちだったりする。学年差よりも個人差が大きいのでなかなか調整がむずかしいこともある。これ以上難度を下げると上位層が退屈してしまうので,下位の学生には無理に思える課題を突きつけることになったりする。

そのような大学の入り口である大学入試も少子化や進学率の上昇,入試制度の多様化を受けて,段々競争的でなくなってきていて,簡単になっていく傾向は続くだろう。

ところが学校を卒業した後の社会というのは能力に応じた問題が目の前に出てくるとは限らない。相対的に弱い人や能力の劣った人の方が難しい問題に直面することもある。たとえば,労働法に関する知識が要求される労働者はより劣悪な環境にしか就職することができなかった,相対的に能力の劣る人かもしれない。ホワイト企業に勤めていれば,人事部の有能な同僚が労働法を守るような制度設計をしてくれるかもしれないが,ブラック企業では自分自身で身を守ることが要求されるかもしれない。

時折,のんびりとした教え子たちを見ていると「多くを求めなければ,ほどほどに暮らしていけるのではないか」というような気持ちでいるのではないかと思うようになり,そうではないこともあるんだよということをどう伝えたものかという気分になることがある。もちろん,僕は彼らの地縁や血縁をすべて把握しているわけではないので,ほんとうに大丈夫なのかもしれない。性格の良さというか,育ちの良さは美徳なのだけども。

必死になってようやく守れるものもあるとか,人生を簡単にするのは難しいこととか,表現が浮かんでは消える。いつまでも学校のように難易度調整パラメータを誰かがいじってくれるシステムが続くわけではなくて,ゲームのように大魔王が最後に出てくるとは限らない。そしてその大魔王は逃がしてくれるとは限らない。頭も身体も精神も,鍛えておくことに越したことはないし,精一杯やってみてようやくほどほどということもある。

4年生はそろそろ就職活動が終わって,地縁や血縁から離れて一人別の土地へ行くことが決まった人もいるだろう。あと半年と少ししか付き合えないけれども,精一杯鍛えておいてほしいなと思っている。

タイトルは昔の漫画の名台詞より。