『原因を推論する』で『ビジョナリー・カンパニー』を斬る

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文献購読という授業で受講生1名を相手に久米郁男(2013)『原因を推論する』有斐閣,をゆるゆると読んでいたのだけど,その中で出てきた『ビジョナリー・カンパニー』批判(『原因を推論する』第6章,元ネタはローゼンツワイグ『なぜビジネス書は間違うのか』)に受講生が関心をもったので,授業の最後の回ではビジョナリー・カンパニーを読みながら,どのような方法論的批判が可能かを考えてみるという内容にした。

ローゼンツワイグはハロー効果による批判をしていたのだけど,それ以外にも,いろいろと突っ込みどころが多くて1回の授業では足らなそうな雰囲気だった。主な議論の内容は以下の通り。

  • 従属変数によるサンプリングをすると,標本全体とは違った傾向がでてきてしまうことがあるよね(『原因を推論する』第8章)。
  • 最初のところではMost similar systems design(『原因を推論する』第9章)に近いこともしているけれども実際に中身を読んでみると差異法はほとんど使わずに合意法(一致法)だらけだね。
  • 本来あるべきリサーチ・デザインはどのようにすべきだっただろうか?そもそもこの調査は仮説検証型に耐えうる問いが最初にあっただろうか?
  • 『ビジョナリー・カンパニー』で第4章「基本理念を維持し,進歩を促す」って言っているけど,この「変えること」と「変えないこと」が大事だというメッセージは使いようによっては反証可能性を満たさないよね(『原因を推論する』第2章)。こういうことを言う上司がいたらどう振る舞うべきだろうか?組織の議論はまともに行われるだろうか?

などなど。一通り斬った後に,この本が売れてしまう(シリーズで5冊は出ている世界的ベストセラーだ)現実とどのように向き合うべきだろうか,というような話をして,授業を終えた。学生達はこれからテスト期間,僕は特にテストをする科目はないので,執筆の時期である。