家計管理はビジネスになるか

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家計に対する考え方や家計管理の仕方というトピックは,教育的には割と関心を持ってもらいやすいので経営学の初年次教育の題材には良いなと思っている。たとえば経営学入門で財務会計と管理会計の違いを説明するときとか,固定費と変動費の違いを説明する時とか,家計に例えて説明をしてみると割と学生の反応がよく,「家計簿付けてみようと思った」などという感想を多くいただいた。

この辺,現状のいわゆる消費者教育というのはどうにも経営的な視点が乏しくて,悪徳商法にだまされないようにしましょうとか,消費者被害にあった場合はどのように回復させる手段があるかを覚えましょう,というところに留まっている(それはそれで,騙す側の戦術を学ぶという意味では興味深い内容なのだけど)。専門教育としての経営学ではない,「教養としての経営学」の一分野として開拓と貢献の余地が残されている分野だと思っている。

じゃあ家計管理教育がそれ単体でビジネスになるほど将来有望な分野なのかと言われると今度は自信がない。潜在的顧客の多さは魅力なのだけど・・。たとえば,オープンキャンパスで高校生から,ファイナンシャル・プランナー(FP)という資格ってどうなんですかという質問を受けるのだけど,業務を独占できるタイプの資格ではなく,さらに上位の資格の独占業務にはタッチできないので,原則としてFP単独で職業として食べていける資格ではありませんよ,と答えている。ただし,現行の制度を一度丸暗記して金融リテラシーを身につけるための勉強のマイルストーンとして使うには良いと思うし,住宅メーカーの営業マンが補助的に住宅ローンのアドバイザリーもできると良いですよね,ぐらいの活用実態をお知らせしている。

最近はFintechなどの流行で,Personal Financial Management(PFM)系のクラウドアプリもいろいろと登場しているが,小遣い帳(レシートの残らないような支出の現金出納記録をつける目的)としては優れているものの,資産管理には今一歩かなと思う。

zaimにしてもマネーフォワードにしても,各種金融機関やECサイトのAPI使って一括管理!までは良いのだけれど,そこから先に待っているのは管理会計的な費目のカスタマイゼーションでビッグデータが存在しないし,どれだけ過去の情報が集められたとしても予算計画や将来設計の側に関する情報もリスク評価の方法も,手がかりをつかむのが難しいなという印象を受けた。

情報がある側の過去の情報についても,消費者の要求が上がれば上がるほど個別対応しかない世界が待っているので,自分で使ってみた結果としては,結局いろいろとカスタマイズしたくなってしまってアプリの限界に達するのではないか。この種の家計管理アプリをいくつか試したのだけど,結局参考や入力補助程度に使うだけで数年前からexcelで管理するようになってしまった。マネーフォワードを昨年有料会員で使ってみたのだけど,いくつかの連携が上手くいかずにこちらも解約。今は無料会員の状態で,各種ポイント(マイルとかTポイントとかヨドバシカメラとか)の管理用として使っている。

管理しようとする以上,生活で使っている何かのAPIの外部連携が上手くいかないとそれだけで全体を把握できなくなってしまうので,結構大変なビジネスだなと思った。僕の場合,Amazonの使用履歴から書籍と日用品を分類したかったのだけど,何度もCAPTCHAを求められるわりに全然情報を拾ってこないので諦めた。ストックの方だと,奨学金の管理も上手くいかなかったので,最大の負債が計上できずに,資産総額(まあ,マイナスなんだけど)の管理にも使えずでどうにも断念。

ビッグデータとしての家計データには価値があるので,データを生かして別のビジネスとして収入源を得られるようになると一気に事業としては楽になるだろうなとは思っている。家計を管理しようとしている消費者に毎月課金させるのはそもそもハードルが高く,あまりうまみのないところだろう。

話を大学教育に戻すと,Howto本に対する一度きりの支出なら割と財布は緩むと思うので,管理会計の研究者だったら誰か教科書テイストのハウツーを書いてみると,授業用テキスト採用を見込みつつ一般読者も狙えて一攫千金を狙えるかもしれない。僕には書くほどの知識がないので残念ながら狙えないのだけど。